
早期からの予防医療へ
20年の循環器専門医としての想いを込めて
生活習慣病に特化したきっかけは?

これまでに20年以上、心筋梗塞や心不全などの重篤な循環器疾患の患者様を診てきました。その中で痛感したのは、進行してからの治療の限界です。心臓をダメにしてしまうと、なし崩し的にどんどん悪化し腎臓の機能も低下してしまいます。その多くは高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が原因となっていました。
生活習慣をしっかり管理することができれば、そういった重篤な疾患を予防できるはずです。「重症になる前に来てほしい」という想いが強くなり、予防に特化した医療を提供したいと考えるようになりました。
急性期医療では救える命に限りがありますが、予防医療では多くの方の将来を守ることができます。循環器専門医として培った知識と経験を、生活習慣病の予防に活かすことが私の使命だと感じています。
循環器専門医が診る意義は?
一般的な内科医の先生方ももちろん豊富な知識をお持ちですが、循環器専門医として生活習慣病を診る大きな意義は「将来のリスクを具体的に見据えた治療」ができることです。例えば降圧薬1つをとっても、本当に多くの種類があります。どの患者様にどの薬剤を使うべきかという判断において、循環器専門医の引き出しは豊富です。この患者様の血圧を下げるだけでなく、「将来の心筋梗塞を防ぐためにはどの薬剤が最適か?」という視点で選択できます。
コレステロールの管理についても、循環器専門医でない場合は比較的甘めにコントロールすることもしばしばありますが、私たちは先のことを見据えてより厳格な管理を行います。重症患者様を数多く診てきた経験があるからこそ、そうならないための治療プランを立てることができるのです。

健診結果を見逃さない
要経過観察の段階からの積極的介入
健診で「要経過観察」となったら?

「要経過観察」と判定された段階こそ、最も重要な介入のタイミングだと考えています。多くの方は「まだ大丈夫」と思われがちですが、実はここからが勝負なのです。特に多いのは「血圧がちょっと高め」「コレステロール値が気になる」「腎機能が少し低下」といったケースです。症状がないため放置されがちですが、これらは確実に動脈硬化を進行させます。
当院では適切なタイミングでフォローアップを行い、必要に応じて早期から治療介入を行います。1年に1回の健診だけでは見逃してしまう変化も、定期的な管理により早期発見が可能になります。
若い世代の生活習慣病は?
30代くらいから健康診断で異常を指摘される方が増えてきます。働く世代の忙しさから、食生活の乱れや運動不足、ストレスなどが重なり、若い年代でも生活習慣病のリスクが高まっています。
特に注目しているのは、若い方でも腎機能が少しずつ低下しているケースです。腎臓は症状が現れにくい臓器のため、気づいた時にはかなり進行していることがあります。早期発見・早期介入により、将来の透析を防ぐことが可能です。
若い世代の方には「今は症状がないから大丈夫」ではなく、「症状が出る前に対策する」ことの重要性をお伝えしています。20年後、30年後の健康を守るために、今から始められることがたくさんあります。

心臓と腎臓をトータルで診る
循環器と腎臓内科専門医による包括的アプローチ
循環器と腎臓内科の連携は?

心臓と腎臓には密接な関係があります。高血圧や糖尿病により動脈硬化が進行すると、腎機能が低下し、逆に腎機能の低下は心臓に負担をかけます。
当院では、私が循環器内科、妻が腎臓内科の専門医として、この密接な関係を踏まえた総合的な治療を行っています。単に血圧を下げるだけでなく、腎臓への影響も考慮した薬剤の選択や、腎機能低下に伴う心血管リスクの管理など、包括的なアプローチが可能です。
例えば、血圧の薬を選ぶ際にも腎臓の保護作用のある薬剤を優先的に選択したり、腎機能に応じて薬剤の調整を行ったりと、専門医同士の連携だからこそできる細やかな管理を実践しています。
腎臓病との関係は?
腎臓は動脈硬化の進行とともに悪化する臓器です。高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、いずれも腎臓にダメージを与えます。しかし、腎臓は症状が現れにくいため、多くの方が気づかないうちに機能低下が進行しています。
最近は腎臓病に対する新しい薬剤も登場していますが、やはり血圧や血糖値のコントロールが最も重要です。腎臓に直接働きかけて根本的に治す薬はまだありません。だからこそ、生活習慣病の管理と腎臓内科の専門的な視点を組み合わせた治療が必要なのです。早期から適切な管理を行うことで、将来の透析を防ぐことが可能になるのです。

睡眠時無呼吸症候群への取り組み
生活習慣病悪化の隠れた原因を治療
SASに注力する理由は?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、生活習慣病と密接に関わる疾患でありながら、見過ごされがちな病気です。従来は耳鼻科や呼吸器科で診ることが多かったのですが、血圧や心臓病への影響を考えると、循環器専門医が積極的に診るべき疾患だと考えています。
睡眠時無呼吸症候群をコントロールしないと、血圧が高くなったり、心臓病を悪化させたりします。心臓病を起こした方の中にも、実は睡眠時無呼吸症候群を合併していて、それが悪化の原因になっているケースが少なくありません。
生活習慣病の根本的な改善を図るためには、隠れた原因にもアプローチする必要があります。当院では簡易検査からCPAP療法まで対応し、生活習慣病の包括的な管理を行っています。
CPAP療法の効果は?
CPAP療法を始められた患者様の多くが、「よく眠れるようになった」「疲れが取れるようになった」と実感されています。最初は装着に抵抗を感じる方も多いのですが、段階的に慣れていただき、治療効果を実際に見せることで最終的にはしっかりと継続できる方が多いです。
何より重要なのは血圧の改善効果です。睡眠時無呼吸症候群の治療により、降圧薬を減らすことができたり、血圧のコントロールが良好になったりするケースもあります。体重減少により睡眠時無呼吸症候群が改善する場合もありますが、基本的には継続的な治療が必要です。生活習慣病の一環として、長期的な視点で管理していくことが重要です。

具体的で実践的な生活指導
パンフレットを活用した継続可能な改善策
生活指導での工夫は?
パンフレットや資料を活用しながら、「塩分はどの程度控えれば良いか」「どの食品にどのくらい塩分が含まれているか」など、具体的で実行可能なアドバイスを心がけています。
患者様の普段の食事内容をお聞きして、「これは控えた方が良い」「この調理法がおすすめ」といった個別のアドバイスを行います。画一的な指導ではなく、その方のライフスタイルに合わせた無理のない改善策を提案することが重要です。
若い世代への意識改革は?
若い世代の方は症状がないため危機感を持ちにくいのが現実です。そこで重要なのは、健診結果の正しい見方をお伝えすることです。
「要経過観察」と書かれていても、実際には3ヶ月後、6ヶ月後に再検査が必要なケースも実際にはあります。1年に1回の健診だけでは、変化を見逃してしまう可能性があります。
また、「今は大丈夫でも、このままでは10年後、20年後にどうなるか?」を具体的にお話しします。重症患者様を数多く診てきた経験から、将来のリスクを現実的にお伝えすることで、今から始める予防の重要性を理解していただいています。

地域に根ざした生活習慣病管理
患者様一人ひとりの将来を見据えて
メッセージをお願いします

生活習慣病は「生活習慣が影響している病気」だからこそ予防できる病気でもあります。健診結果を有効活用し、「要経過観察」の段階からでもお気軽にご相談ください。
20年以上にわたり重症の循環器疾患の患者様を診てきた経験から、「そうなる前に来てほしい」という想いを強く持っています。心筋梗塞や脳梗塞になってからでは、できることに限りがあります。しかし、生活習慣病の段階で適切な管理を行えば、将来の重篤な疾患を防ぐことができます。患者様お一人おひとりのお話をしっかりとお聞きし、その方に最適な治療と生活指導を提供いたします。
症状がなくても健診で気になる数値があれば、それは体からのサインです。循環器専門医として、また腎臓内科との連携により、皆様の健やかな将来を一緒に守っていければと思います。